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2006年 06月 30日
福井県小浜 瓜割の滝 鵜の瀬 神宮寺
去年、瓜割の滝の存在を知ってから
そこに湧く水のことを思うことが多くなった。
あんなにおいしい水は今まで飲んだことがなかった。

恋焦がれること半年ちょい。
6月30日、大きなポリタンクを積んで
福井県小浜に向うべく、鯖街道を走った。


若狭から京都へ至る多数の街道や峠には、
本来それぞれ固有の呼び名がある。
いつの頃からか、これらの道を総称して、
人は「鯖街道」と呼ぶようになった。
その道の中でももっとも盛んに利用された道は、
小浜から上中町の熊川宿を経て滋賀県の朽木を通り、
京都の大原から出町柳に至る「若狭街道」。

その若狭街道を通って小浜までは
車だと思っていた以上に近い。

 
若狭から運ばれたひと塩の鯖は京の都に着く頃には、調度よい塩加減になった。
京都の食文化の中に今も若狭の魚がいきている。
この道は単に鯖だけを運んだのではない。
魚に加え、いろんな海産物も運ばれ、文化も運ばれた。
北前船によって送られてきた物資が都に運ばれた。


京都に向かう上り荷には魚介類など若狭の海産物が、
小浜に向かう下り荷には若狭では手に入りにくい生活用品や京土産を携えていた。
その街道で賑わったのが熊川宿である。
最盛期には村人や馬方たち数百人が
鯖街道背持人として30キロの荷物背負って行き来した。
熊川宿についで大きいのが朽木宿である。
「京は遠ても十八里」は、鮮度のある魚を京へ運ぶ若狭の人の心意気を感じる言葉である。
実際には、駅伝のように宿場宿場でリレーして運ばれた。


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熊川宿で、鯖寿司を頼むも
ちょうどその店は昼食の仕出し弁当を何十人か分用意した後で
ご飯がないといわれた。
他の店に行けばよかったのだが、
「鯖寿司食べに来たのにー」と言うと
ちょっと待っていただければ、とおっしゃるので待つことに。

しかし、ホント他の店に行けばよかったのだけれど
やはりできたての鯖寿司というのは、なれてなくてイマひとつなのね。
食べきれないとラップにくるんでいただき持ち帰った数切れの鯖寿司は、
とってもおいしかった。


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ひっそり静かな宿場町の中、空家があった。
まだ空いてからそう時間は経ってなさそうだ。
奥に置かれた足踏みミシン、古タンス。
ああいうのを見ると、胸がチクチクする。
やたらと懐かしい感じで、泣きそうな気持ちになる。



今回の主目的は、瓜割の滝。

ここの水は本当に清らか。
水が湧きでているところがご神体として祀られている。

私はここに流れる水を夢中でカメラに収めた。

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その後、鵜の瀬へ。


鵜の瀬は遠敷川(おにゅうがわ)の中流にあり、
東大寺二月堂への「お水送り」神事でも有名な地。

二月堂の創建者である実忠和尚が、
天平勝宝四年東大寺の修二会に全国の神々を招いた。
ところが若狭の遠敷明神だけが魚釣りに夢中になり、遅れてかけつけた。
そのおわびにと、本尊に供える水を若狭から送ると申し出た。
遠敷明神が大岩の前で祈願するとたちまち岩が真っ二つに割れ、
白黒二羽の鵜が飛び出し、その跡から水が湧き出した。
という由来から、それが若狭井と名付けられ、
また、鵜を放った場所を鵜の瀬と呼ぶようになった、とな。

毎年3月2日、小浜市の遠敷明神を祀った神宮寺でお水送りの神事は始まる。
お堂で修二会を営んだ後、7mもある大護摩に火がつけられ、その火をたいまつに移し、
山伏を先頭に神宮寺から鵜の瀬まで1.8Kmをたいまつの行列が進む。

鵜の瀬でも大護摩がたかれ、住職が送水文を読み上げ、
修二会に供えてあった香水を竹筒から遠敷川へ注ぐ。
その10日後、二月堂の「お水取り」で汲み上げられる。

鵜の瀬の水汲み場で、その裏の山一帯はウチの土地
と言うじいちゃんが話しかけてきた。

ワシ、お水送りでは主役やし
というじいちゃんの話はとてもおもしろかった。

この鵜の瀬は、水中に洞窟があり、そこからは
奈良の方まで続いている。
何を流しても、きっちり10日後には奈良につく、と。
朝流したら10日後の朝に
昼流したら10日後の昼に
ちゃんと着くのだ、と。

ある大学の学生が一人がようやく通れる水窟にもぐってみたそうだ。
30mぐらい先から、まっすぐ下に落ちていく真っ暗い場所があったそうだ。
そこから先は、人は二度と戻ってこれない場所。

奈良の小学生が修学旅行でこの辺りを訪れるそうだ。
缶詰を袋に詰めて、その水窟に流して帰るという。
20個詰めて流したら、10日後にちゃんと袋はたどり着いた
と報告があったと言う。
20個揃っておらず、17個しかなかったと。
あとの3個はどうしたのだろうね、と。

でも、とにかく
そこから流したものは
ちゃんと奈良に10日後に運ばれる。
本当にそうなっているんだ。
と、じいちゃんは淡々と語ってくれた。
その地の人は、ちゃんとそう信じているのだ。



その後は、若狭井のある神宮寺へ。
ここのお寺の社は、とても美しい。
北門も、とても優雅だ。
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(写真、もう時間的に厳しかった・・・全部露出アンダーな暗い写真。)


神宮寺は神仏融合、仏像の前で拍手が打てる唯一のお寺だ。
住職が色々とこの寺にまつわる不思議を教えてくれる。
もう、何度も話しているからだろう。
語り口もスムーズすぎるぐらいスムーズ。



小浜は人口わずか3万3千の小さな港町であるが、
100を超える寺院を擁し「海のある奈良」と言われているらしい。
国宝、重要文化財に指定されている寺社も数多くある。



おそらく私は水を汲みに
これからも、たびたび小浜を訪れる。

何かが、私を呼び寄せている、
そんな気もずっとしている。

私はこの地の水に魅せられている。

# by naru-chie | 2006-06-30 23:59 | 水をめぐる